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「オメガファイブ サウンドトラック」コンポーザー岩月博之さんインタビュー

 2008年3月19日にリリースした「オメガファイブ サウンドトラック」の作曲者、岩月博之さんへ海外からインタビューが敢行されました。

siliconeraのサイト(原文)

今回は、上記インタビュー全文を翻訳したものをコラム記事で掲載します。

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 Road to the Future: 岩月博之 Omega Five インタビュー

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 「OMEGA FIVE」はXbox LIVE アーケードサービスで楽しめる横スクロール型シューティングゲームである。その特筆すべきおもしろさは、なんと言ってもゲーム中にあの懐かしい16ビット機のグラフィックやサウンドを模倣した「レトロモード」を搭載していることである。

 先月日本ではこのタイトルのサウンドトラックがリリースされたが、このタイトルは斬新なレトロ回帰によって近年の横スクロール型ゲームのサントラには無い新しいスタイルを作り上げたと言えよう。 作曲家の岩月博之はこのアルバムを大きく三つの明確なカテゴリーに分けている。「ノーマルモード」「レトロモード」「アレンジバージョン」である。

 近年のゲーム音楽の変遷を象徴するかのように、このアルバムはゲーム音楽界におけるサントラの常識を「過去に戻る」という形で覆したと言える。


インタビュー:  Kaleb Grace, Godai, ジェリアスカ
翻訳:佐藤  領二郎

Siliconera: タイトル「Omega Five」の制作にあたり、岩月さんはプロジェクトチームとどのように関わりがありましたか?開発の過程で音楽制作に直に影響を与えたチームの方針などはありましたか?また逆に音楽がグラフィック制作や実際のシナリオ開発に影響を与えたということはありましたか?

岩月博之:   当初から、企画側から特に指示はなく、私が作った曲をそのまま受け入れる、ということでした。その後は他のスタッフにゲームやステージの内容を確認したり、開発中のゲーム画面を見ながら、制作方針や個々の曲の内容を決めていきました。 BGMが他のスタッフへ与えた影響についてはよく分かりません。ただ、レトロモード用BGMを初めて聴かせた時、メインプログラマがそれを気に入って、さらにレトロモードをより良いものにするため画面処理などを改良してくれました。これは嬉しかったです。

Siliconera: オメガファイブは、オリジナル・サウンドトラック、リミックス、レトロなどの様々なテーマ音楽がぎっしりと詰まった驚愕のアルバムです。熱心なゲーマーはこれらの音楽に親しいですが、ゲームにレトロモードを使われたのは何故でしょうか?

岩月博之: 元々はメインプログラマによるシェーダー(画面描画の為のプログラム)の試作から始まった、お遊び的なものでした。ですので、当初は画面処理(低解像度化+減色)のみでした。 その後完成が近付いた頃、私が当初予定していなかった専用BGMを付けました。レトロな画像処理とシンプルな音の組み合わせは他のスタッフにも気に入ってくれました。ここまで作ったのであれば、ちゃんとしたものに仕上げようということになり、独立した「レトロモード」として仕上げられました。 レトロモードは、昔からのプレイヤーの方々には懐かしく、若い方々にはかえって新鮮な表現として楽しんでいただけるだろうと思っています。

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オメガファイブ サウンドトラック

Siliconera: レトロモードの曲は非正弦波形の、短形波、三角波、ノコギリ波が音として使用されているようですが、このような音響を出すための技術的な側面のお話をお聞かせください。そして、これらの音効果から得られる個人的な印象などあればお願いします。

岩月博之:    レトロモードの仕組み自体は簡単です。オメガファイブはいわゆる内臓音源的再生方法を採用してまして、音色とそれ以外が別々になっています。ノーマルモードとレトロモードの切り替えはその音色を随時入れ替えることで実現しています。そのため、聴こえる印象は異なりますが、演奏内容は同一です。 レトロモードの音色は一般的な波形編集アプリケーション(Adobe Audition)で作った、単純な波形の集まりです。ドラムの音色はサンプリング周波数を一旦下げてから再度48kHzまで戻したものを使っています。これはサンプリング周波数の異なる波形を同時に再生すると実際の発音のタイミングが若干ずれることへの対策です。 ごく一部、ノーマルモードと共通のリアルタイムエフェクト(バンドパスフィルター)が残っています。これは時間的制約や仕様上外せなかったものですが、一面BGMの冒頭などのようにフィルターのおかげで良い効果を出せている部分もあり、結果的に残して良かったと思っています。 先程、音色以外は同じものであると書きましたが、やはり音色が変わると曲の印象もかなり変わるのだと実感しました。単純な波形ほど音がはっきりとして聞き取りやすいため、複雑な波形の音色のときよりも直接的な聴き応えがあります。他のスタッフから「ノーマルモードよりもむしろレトロモードの方が良い」という感想をもらった時は複雑な心境でしたが、作っただけの効果はあったと思います。

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Siliconera: 長年にわたりナツメで作曲されていらっしゃいましたが、懐かしい音楽をふりかえるためにスーパーファミコン時代に作曲された曲を聴かれましたか?

岩月博之: 日頃から過去に作った曲を聴くことがありますが、古くてPS2以降のストリーム再生のものくらいです。それらは素材として音声データが残っていますので、簡単にiPodなどに入れて聴くことができます。 録音をする習慣がなかったスーパーファミコン当時のものは、頼まれて録音をしたいくつかのもの以外手元にほとんど残っていないため、あまり聴きません。プライベートの時に動画サイトやブログなどで耳にすることの方が多いです(笑)。

Siliconera: SuperSweepとのコラボの話はどのようなきっかけで始まったのですか?またアレンジ版を通してご自身の曲への新たな発見や刺激を受けた部分などございますか?

岩月博之:    オメガファイブが配信された後、並木(さんたるる)さんから頂いたメッセージがきっかけです。かなり早い時期に、ゲームの感想とともにサウンドトラック希望のメッセージを頂きました。私たちにとってもオメガファイブは久しぶりのオリジナルタイトルであり、これは良い機会であると思い、サウンドトラックを作ることにしました。 その後、並木さんからスーパースィープさんをご紹介いただいて、サウンドトラック制作をお願いいたしました。かなり短い制作期間でしたが快く引き受けていただきました。おかげさまですばらしいサウンドトラックに仕上がったと思います。 私の曲がアレンジされるのは「カオスワールド」というファミコンゲームのサウンドトラック以来で、今回どのようなアレンジになるのか楽しみにしていましたが、どの曲もとても刺激的で素晴らしかったです。たしかにそれぞれ私が作った曲なのに別の人の味が加わっているというなんとも不思議な感覚で、初めて聴かせていただいた時にはかなり興奮しました。

Siliconera: サウンドトラックCDでは岩月さんご自身で「Road to the Future」のアレンジをなさってますが、オリジナルのレトロ版と比較してどのようなものを目指してアレンジなされましたか?

岩月博之:   「Road to the future」はスタッフロールBGMをメインとした3曲で構成されていますが、単なるメドレーではなく、一つの曲になるように心掛けました。曲自体にはあまり手を加えていませんが、もっと変化させても良かったかな、と後になって思います。 また、最終トラックと先頭トラックを繋いてサウンドトラック全体をループして聴いていただきたい、または先頭に戻ることでサウンドトラック全体をまとめられないかと考えて、曲の最後にタイトルBGMが来るようなアレンジにしました。この曲が最終トラックだと決まった時点でこのようなアレンジにすることを決めていました。お聴きになった方々へ少しでも伝わると嬉しいです。

Siliconera: 新しいゲームタイトルのプラットフォームとしての「Xbox Live Arcade」についてどのように思いますか?従来のハード機器と比較してみて(システム面、サービス提供面、またその音楽を担当されるご立場で)どのような変化があると思いますか?

岩月博之:   Xbox LIVE Arcadeはゲームを手軽に遊ぶ為のプラットフォームとして良いものだと感じています。Xbox LIVEの統一されたネットワーク環境をベースとしたランキング表や協力プレイなどは素晴らしいです。また、すべてのタイトルに体験版が付いているのも特徴的です。 ゲーム音楽の面では、サービス開始からしばらくは容量制限の為、曲数を少なく抑えるか、オメガファイブのようにいわゆる内蔵音源的再生方法をとる必要がありました。最近は容量制限が少し緩和されたおかげで余裕を持って開発できるのではないかと考えています。 また、Xbox 360の強力なサウンド機能を使った、例えばリアルタイムに音を生成・加工するようなシステムを持ち、インタラクティブに楽曲が変化するBGMを持つゲーム、などが現れてもおもしろいと思います。

Siliconera:  多くの英語圏のファンの間では、岩月博之という作曲家の姿がなかなか謎めいたものであるという印象を受けるんですが、これまでもご自身の作品について一般の人に向けてお話しするといったことはあまり気が進まないといったようなことはございましたか?もしくはオンラインのフォーラムやSweeprecordブログなどを通して最近はそういう機会は増えて来ている感じでしょうか。

岩月博之:  私個人の気持ちというよりは、ナツメの一員としての立場の問題ですね。 私はこれまで、ナツメの名前が表に出ない仕事ばかりしていましたし、皆さんに向かって発言する機会がありませんでした。また、プライベートで仕事についてお話しすることも諸事情によりなかなか難しいです。 そういった経緯もありまして、この度のオメガファイブの配信開始、またサウンドトラック発売は良いきっかけだったと思います。今後も機会がありましたらいろいろとお話させていただければと思います。

Siliconera:   音楽プロジェクトのために他の方と一緒に仕事をされることについては、どのように思われますか? オメガファイブはソロの作品でしたが、チームワークの場合には作曲のプロセスが非常に異なりますか?

岩月博之:    他の方と一緒に仕事をすることは私にとって刺激になりますし、他の方々が作るサウンドから学ぶことも多いです。機会があればいろんな方々と一緒に仕事してみたいです。 スーパーファミコンの頃は他の方が作ったMIDIデータを元に私が仕上げることがありましたが、ほとんどの場合作曲者が最後まで仕上げることがほとんどです。

Siliconera:  ナツメの素晴らしい点、ナツメでの仕事がゲーム音楽家の経験としてどのように思われるか教えて頂けますか?

岩月博之:    経験豊富な人達が沢山いることでしょうか。ファミコンやスーパーファミコンの頃に一緒に仕事をした人達の多くが今でも現役で働いてます。おかげでオメガファイブのようなゲームを作ることができたのだと思います。 ナツメでゲーム音楽制作に携われたこと、またそれを今でも続けていられるというのはとても幸運なことであり、周囲の人々からの助けにとても感謝しています。今後も続けられる限り頑張っていきたいです。

Siliconera: 現在はどのプロジェクトでお仕事をなさっていますか?

岩月博之:  残念ながら詳細は書けませんが、新しいタイトルのサウンドを担当しています。

Siliconera: 岩月さん、今回はインタビューにご協力いただきありがとうございます。

岩月博之:  こちらこそ、このような機会を設けていただきましてありがとうございました。インタビュー関係者、並びにご覧いただいた皆様に感謝いたします。


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